2021.07.30
小金井市教育委員会の取り組みについて
小金井市教育委員会
指導主事の西尾です。
教育委員会の立場から本実証における取組体制や課題感、今後の方針をご紹介します。
1 本実証を進める取組体制について
小金井市教育委員会では下記の図のような体制をとり、GIGAスクール構想による個別最適化された深い学びなどの実現に向けて一人一台端末の活用を進めています。
❶小金井市教育委員会はビジョンの策定と各校のサポートを担い、具体的には、ICT機器活用の計画・運用ルールの策定、アンケートの実施、研修会や推進委員会の実施を行っています。教育委員会が実施する❷教務主任研修会、❷研究主任研修会、❷次世代教育推進委員会は、各校へ新たな学びを提供する場としての役割をもち、各校の一人一台端末の活用状況についての情報共有および課題発見、一人一台端末の新たな活用事例の検討を行っています。特に、❷次世代教育推進委員会は、NTT Comの協力のもと、月1回程度のオンライン会議と集合型の研修を併用開催し、一人一台端末を活用した事例の共有や検討を定期的に行っています。教育委員会では学校間の横のつながりを重視し、情報共有などの機会を定期的に設定することに努めています。
学校では、❸校長が、ICT機器、特に一人一台端末を活用した具体的な姿や目標を提示し、実際には、❹ICTリーダー(日常活用の推進)や❺ICTリーダー(新たな学びの推進)が中心となって、ICT機器の活用に向けた校内研修・研究の企画・運営、校内環境整備を行っています。そして、各学年にいる❻ICTサポーターがICTリーダーと連携しながら、担当学年内でのICT機器、特に一人一台端末活用のサポート、意見交換、情報共有を行っています。このように、各校において推進の中心となる教員にその役割を明確に与え縦のラインを整備することで、校内の推進体制が活性化し、すべての教員が一人一台端末を活用した授業実践ができるようになることを目指しています。
2 ICT日常活用を進める上での課題について
現時点で、3点の課題が挙げられます。
1点目は教員間、学校間で活用状況に差が生じていることです。5月に実施した教員向けアンケート結果によると、5割の教員が週3日以上の授業でのICT機器活用ができている一方、2割弱の教員は月1回以下のICT機器活用にとどまっている現状があります。全体的に、中学校よりも小学校でのICT機器活用が進んでいる傾向が見られました。
2点目は教員研修の実施が環境整備に追いついていないことです。GIGAスクール構想の推進により、ICT機器を整備しさまざまな学習用コンテンツを急ピッチで導入してきました。そのため、教員の研修が整備に追いつかず、各校においては、独自の活用および独自の情報共有をもとに試行錯誤しながら活用が始まりました。そのため、現在でも活用が十分に進んでいない学校は、一人一台端末の活用について何から始めればよいのか手探り状態が長く続いた学校です。
最後に、ネットワーク環境や機器整備など環境面の課題が挙げられます。小金井市では、インターネット環境と児童・生徒の一人一台端末の整備が整った後も、通信の不具合、年度更新時の児童・生徒の増加による一時的な端末不足などが影響し、計画通り授業が進まないことがありました。今後、GIGAスクールサポーターの技術面での協力を得て、各校における一人一台端末の円滑な活用推進を図っていきます。
3 今後の取組方針について
各校の活用状況の差を埋めるために、前述した情報共有の場の設定だけでなく、一人一台端末の活用事例をスピーディーに広めていく必要があります。現在、次世代教育推進委員会のオンライン会議において、授業記録・共有サービス「BANSHOT」を活用して、一人一台端末を活用した実践事例の収集と閲覧を行っており、十分な事例が集まり次第、市内全教員が閲覧できるようにします。
また、各校の活用状況に応じた教員研修を企画・運営します。これまで、Google社の協力のもと、GoogleWorkspaceの研修を開催し、参加した教員が各校で伝達研修を行ってきました。今年度は、NTT Comの協力のもと、まなびポケットの活用についてオンライン研修を計画・実施しています。また、NHKの協力を得て、NHK for schoolの研修を企画しています。これらの教員研修を若手教員およびICT初級者の研修として位置づけ、受講者自身の授業改善につなげていきます。今後は、教員の一人一台端末の活用度合いに応じた研修内容を設定したりコンテンツごとの研修を企画・立案したりしていきます。
環境面の整備・充実を図るために、各校の現状把握から課題を分析し、解決に向けて関係部署と連携して早急に改善に向けて取り組みます。
4 最後に
ICT機器、一人一台端末の整備および活用の充実が目的ではありません。
- これからの時代を生き抜いていくために必要な資質・能力を育成するために、主体的・対話的で深い学びの実現、各教科の本質に迫った授業の実践、課題発見学習や体験学習などの充実を図っていかなければならない
- 教師主導型の授業から子供が主体的に学ぶ授業への変革を実現する方策の1つとして、ICT機器、特に一人一台端末を効果的に活用していく必要がある
- ICT端末を活用することで広がる、学びの可能性を全教員で共通理解することも重要なことである
今後も、ICT機器の効果的な活用を通して、誰一人取り残されることなく、豊かな学びが実現されているのかといった視点を軸におき、授業の在り方を模索していきます。